
武笠陽一
Yoichi Mukasa
酒を知り、造り手と味わう方の双方に信頼される、本物を知るエキスパート。
大手ビール会社勤務を経て、100年以上続く坂戸屋の5代目として現職。
会社員時代に経験した大量生産・大量消費のビジネスとはまったく逆の、丁寧に造られた本物を取り扱う、妥協のないスタイルを貫く。
ともすれば専門的になりすぎる酒の世界を、明瞭な言葉と実践で示し、信念を持って造られた酒を顧客に繋ぐ指南役。
…
「覚悟を決めた私は、お鮨屋さんの端っこに座り、お通し・おつまみ・シャリそして、それに合わせるお酒…ひたすらメモを取りました。他のお客さんへは「この人酒屋なんで気にしないで」なんて言われながら。
お店が終わったら、職人さんへ提案会。
あ、これ合うね。これは外した。繰り返し、何回も何回も。
高い、有名関係なし。鮨を推す酒なのかそうでないのかだけのシンプルな世界で、思ったことをちゃんと言おうと、二人とも正直者になりました。
一緒に蔵元さんへ行ったことで、どういう方がどういう想いで酒を作っているのかというストーリーを背負い、共有できた事も大きかった。
そうしていく中で、気づけば私たちの関係は、売る・買うの関係でなく、お客様を絶対笑顔にして帰す為にいつでもベストを尽くすという、お互いへの尊敬と、信頼で結ばれた関係になりました。
どれだけ大変でも本当に美味しいものを出して、喜びと納得の中で食事をし、酒を飲んでもらうか。その最初の一歩を踏み出す勇気を身につけた時、自分が覚醒していく感覚を覚えました。
売って終わりじゃない。お酒に、料理に、人に、どれだけ寄り添えるかを大切にする想いは、今の私を支えてくれています」
_ コラムより